聞き漏らしたことは、全部あとで返ってくる
制作が中盤に差しかかったころ、こういう言葉が飛んできます。
「あ、スマホ版もありますよね?」「ブログも更新できるようにしたいんですけど」「ロゴのデータ、実は手元にないかもしれません」。…そのたびに、作業が増える。でも、金額は増えない。
これ、あなたの段取りが悪いわけじゃないんです。最初のヒアリングで聞いていなかったことが、そのまま無償の追加作業として返ってきているだけ。
つまり、ヒアリングは案件のいちばん上流にある防波堤なんですよね。ここで30分多く聞いておくと、あとの30時間が守られます。今日は、そのまま使える質問項目を整理していきますね。
ヒアリングの目的は、2つある
質問リストの前に、考え方から。ヒアリングには目的が2つあります。
- ① 作るための情報を集める … 何を、誰に向けて、どう作るのか
- ② 見積もるための情報を集める … どこまでやるのか、素材は誰が用意するのか
意外と抜けるのが②です。「サイトのイメージ」ばかり聞いて、原稿は誰が書くのか、写真はあるのか、更新は誰がするのかを聞かずに終わる。…そして見積もりが崩れます。
ヒアリングシートは、見積書の下書きでもある。この意識で聞くと、質問が変わりますよ。
そのまま使える、6ブロックの質問項目

全部を毎回聞く必要はありません。案件の規模に応じて削ってください。
①|目的とゴール
いちばん大事なブロックです。ここが曖昧なまま進むと、判断の基準がなくなって、最後まで迷走します。
- 今回、サイトを作る(リニューアルする)目的は何ですか
- このサイトで、達成したいことは何ですか(問い合わせ増、採用応募、認知など)
- 成果をどう測りますか(問い合わせ件数、アクセス数など)
- 現状、いちばん困っていることは何ですか
「なんとなく古いから」という答えでも大丈夫です。そこから一段掘るのがこちらの仕事です。
②|ターゲットと、伝えたいこと
- 誰に見てもらいたいサイトですか(年齢・性別・立場など)
- その人に、いちばん伝えたいことは何ですか
- 競合や、参考にしている同業のサイトはありますか
- 他社と比べたときの強みは何だと思いますか
デザインの方向性は、ここで半分決まります。
③|サイトの中身(ページと機能)
見積もりに直結するブロックです。数で確定させるのがコツ。
- 必要なページを教えてください(トップ、会社概要、サービス、事例、お問い合わせ…)
- おおよそ何ページくらいを想定していますか
- 必要な機能はありますか(お問い合わせフォーム、ブログ、実績一覧、予約、EC など)
- 公開後、ご自身で更新したいページはありますか
- スマートフォン対応は必要ですか(基本は必要ですが、明示的に確認します)
「ご自身で更新したいか」は必ず聞いてください。この一問でCMS実装の有無が決まり、金額が大きく変わります。
④|デザインの方向性
- 好きなサイト、いいなと思うサイトを2〜3つ教えてください
- 逆に、こうはしたくない、というイメージはありますか
- 使いたい色やフォントの指定はありますか
- ロゴやブランドのガイドラインはありますか
「好きなサイト」より「こうはしたくない」のほうが情報量が多いことが多いです。修正の往復を減らしたいなら、こちらを丁寧に聞きましょう。
⑤|素材と、担当の分担
ここが抜けると、見積もりが確実に崩れます。
- 原稿(文章)はご用意いただけますか。それとも制作側で作りますか
- 写真はありますか。撮影や素材購入は必要ですか
- ロゴのデータ(ai、svg など)はお持ちですか
- サーバーとドメインは既にお持ちですか。新規契約が必要ですか
- 既存サイトの管理情報にアクセスできますか
原稿と写真の分担は、金額が何十万円と変わりうるポイントです。必ず確認を。
⑥|予算・納期・体制
聞きにくいけれど、いちばん大事なブロックです。
- ご予算のイメージはありますか(幅でも構いません)
- 公開希望日はいつごろですか。その日程に理由はありますか
- 今回の窓口はどなたですか
- 最終的に確認・決定されるのはどなたですか
- 社内で確認にかかる時間は、どのくらい見ておけばよいですか
太字にした決裁者の確認、これは絶対に聞いてください。担当者と合意して進めたのに、後から上司が出てきて全部ひっくり返る。…修正地獄の典型的な原因がこれです。くわしくは修正は何回まで?の記事に書きました。
聞きにくい質問の、聞き方
「予算」と「決裁者」。この2つは、多くの人が飲み込んでしまいます。…でも、言い方の型を持っておけば大丈夫です。
予算を聞くとき
「ご予算のイメージがあれば、幅で構いませんのでお聞かせください。ご予算に合わせて、優先順位をつけたご提案ができますので。」
ポイントは、相手のための質問だと伝えること。値踏みではなく、最適な提案のために必要なんですよね。
もし「まだ決まっていない」と言われたら、逆にこちらから幅を提示します。
「ページ数と機能によりますが、この規模ですと◯万円〜◯万円あたりが一般的です。この範囲でいかがでしょうか。」
安く見積もる癖がついている方は、単価が安いから抜け出す記事もあわせてどうぞ。
決裁者を聞くとき
「進行をスムーズにしたいので確認させてください。デザインなどを最終的にご承認いただくのは、どなたになりますでしょうか。」
「進行のため」という理由を添えると、まったく失礼になりません。むしろ、段取りができる人だと伝わります。
ヒアリングの後、必ずやること
聞いて終わりにしないでください。ここが差になります。
当日か翌日に、聞いた内容をまとめてメールで送る。 これだけです。
「本日はありがとうございました。伺った内容を以下にまとめました。認識に相違があればご指摘ください。」
これをやると、3つの効果があります。
- 認識のズレが、着手前に見つかる
- 文字で残るので、後の「言った言わない」を防げる
- 仕事が丁寧な人だと伝わり、信頼が上がる
そしてこのメールが、そのまま見積書の根拠になります。項目の分け方は見積書の書き方の記事に、契約書に落とすときの項目は契約書の記事にまとめました。
まとめ:ヒアリングは、いちばん上流の防波堤
ぎゅっとまとめますね。
- ヒアリングの目的は2つ。作るための情報と、見積もるための情報
- 質問は6ブロック:目的・ターゲット・サイトの中身・デザイン・素材と分担・予算と体制
- 金額を左右する急所は、「自分で更新したいか」と「原稿と写真は誰が用意するか」
- 聞きにくい予算と決裁者は、相手のための質問として聞く
- ヒアリング後は、必ず内容をメールでまとめて送る
最初の1時間を丁寧にやるかどうかで、その後の数か月がまるごと変わります。…しんどい案件の多くは、実は着手前に決まっているんですよね。
次の問い合わせから、この6ブロックをメモに貼っておいてください。それだけで、聞き漏らしはかなり減りますよ。

