見積書の前で、手が止まる
問い合わせが来た。案件の話も進みそう。…なのに、見積書を作ろうとした瞬間、手が止まる。
「項目って、何をどこまで分ければいいんだろう」「この作業、いくらで出せばいいんだ」「高いと言われて断られたら怖いな」。…そして結局、ざっくり一式でまとめて、なんとなく安めの数字を書いてしまう。
その感じ、よく分かります。見積書って、誰も教えてくれないんですよね。…でも実は、見積書は「金額を伝える紙」じゃなくて、「トラブルを防ぐ設計図」なんです。ここが分かると、書き方も、そして単価も変わります。
見積書の役割は、3つある
まず、考え方から。見積書には、こんな役割があります。
- ① 金額を伝える … いちばん分かりやすい役割
- ② 作業範囲を決める … どこまでやって、どこからやらないか
- ③ 揉めごとを防ぐ … 修正回数・支払期日・前提条件を、先に握っておく
見落とされがちなのが②と③です。「一式 ◯◯円」だけの見積書は、②③の機能をまったく持っていません。だから後から「これも入ってますよね?」が起きるんですよね。
つまり、丁寧に項目を分けることは、あなた自身を守る作業なんです。
見積書に入れる項目(Web制作の場合)

案件によりますが、標準的にはこう分解します。
制作の前段階
- ヒアリング・要件整理 … 打ち合わせ、要件定義
- サイト設計(構成案・ワイヤーフレーム) … 何ページを、どういう構造で作るか
制作
- デザイン制作(トップページ/下層ページ、それぞれ単価×ページ数)
- コーディング(同上。レスポンシブ対応の有無も明記)
- CMS実装(WordPress構築、投稿機能、カスタム投稿など)
- フォーム設置(お問い合わせフォーム等)
公開まわり
- サーバー・ドメイン設定/初期設定
- 公開作業・動作確認
素材・その他
- 写真撮影/素材購入費(実費が発生するもの)
- 原稿作成・文章制作(クライアント支給かどうかで大きく変わる)
継続(別枠にする)
- 保守・運用費(月額)… 更新代行、バックアップ、不具合対応
ページ単位・作業単位で分けるのがコツです。分けておくと、「予算が厳しい」と言われたときに削る交渉ができるんですよね。一式だと、値引き交渉が全体の値切りになってしまいます。
揉めないために、必ず書いておく一行たち
金額より大事かもしれません。見積書の備考欄に、この4つを入れてください。
- ① 修正回数 … 「デザイン修正は2回まで。以降は1回あたり◯円」
- ② 見積もりの有効期限 … 「本見積もりの有効期限は発行日より30日間」
- ③ 支払条件 … 「着手金として50%、納品後に残額。請求書発行月の翌月末までにお支払い」
- ④ 含まないもの … 「原稿・写真素材はご支給いただく前提です」「サーバー費用は含みません」
とくに④「含まないもの」を書く人は少ないのですが、これが後半の揉めごとをかなり防ぎます。「入ってると思ってた」を、先に潰しておくわけですね。
①については修正は何回まで?の記事、③の未払い対策については音信不通・未払いの対処記事にくわしく書きました。
金額の決め方:作業時間から逆算する
「いくらで出せばいいか分からない」の答えは、時間単価 × 想定時間が基本です。
- 自分の時間単価を決める(月に必要な売上 ÷ 稼働可能時間、から逆算する)
- 各項目の想定作業時間を出す
- 掛け合わせて、項目ごとの金額にする
ここで大事なのが、打ち合わせ・メール対応・修正の時間も工数に入れること。手を動かす時間だけで計算すると、確実に赤字になります。…体感で、コミュニケーションのコストは想像の1.5倍かかります。
そして、安く見積もる癖がついていると、いつまでも消耗から抜けられません。単価が上がらない構造については単価が安いから抜け出す記事に書いたので、あわせてどうぞ。
「高い」と言われたときの考え方
見積もりを出して「高いですね」と言われる。…これ、心が折れますよね。でも、対応の方向は2つしかありません。
- 値引きする … 何も変えずに金額だけ下げる。いちばんやってはいけない対応です。自分の仕事の価値を、自分で否定することになります
- 範囲を調整する … 「では、下層ページを3ページ減らす形ではいかがでしょう」「原稿をご支給いただければ、この項目を外せます」
金額ではなく、範囲で調整する。これが鉄則です。項目を分けて見積もっておけば、この交渉が自然にできます。…ここでも、丁寧な見積書が自分を助けてくれるんですよね。
まとめ:見積書は、自分を守る設計図
ぎゅっとまとめますね。
- 見積書の役割は3つ:金額を伝える・範囲を決める・揉めごとを防ぐ
- 「一式◯円」は危険。ページ単位・作業単位で分ける
- 備考欄に4つの一行:修正回数・有効期限・支払条件・含まないもの
- 金額は時間単価 × 想定時間。打ち合わせや修正の時間も入れる
- 「高い」と言われたら、値引きではなく範囲で調整する
見積書をちゃんと作ることは、面倒な事務作業に見えて、未来の自分の時間と気力を守る仕事です。
次の案件から、まず備考欄に一行足すところから始めてみてください。「修正は2回まで」。…それだけでも、景色は変わりますよ。

